六等星の瞬き

ひっそりと本(児童書)について書きます。たまに雑記も。

アニメ版 NO.6の功罪①【ネタバレ注意】

2011年夏にフジテレビのノイタミナ枠で放送されたアニメ版NO.6(ナンバーシックス)。深夜アニメとしては比較的有名かつメジャーな作品を送り出している枠なので、NO.6の場合もアニメ化でかなり知名度が上がったのではないでしょうか。

しかし全9巻の小説を11話のテレビ放送にまとめるという、強行スケジュールです!そのため沢山のカットや改変(時に物語の根幹や本筋も)があり、原作ファンにとっては手放しにお勧めできないものとなっているのは否めません。それで、なんとも偉そうなタイトルをこの記事につけてしまいました。

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現在は様々な動画サイトで合法的に過去のアニメが楽しめる時代ですから、アニメ版は今後も『NO.6』という作品の入り口として機能し続けるでしょう。アニメ視聴後、原作に興味を持った方などにこの記事を読んでいただけると良いなと思っております。

 

アニメに対して釈然としない思いが残っているのは、アニメ版に素晴らしい部分があるからなんです。巻数に比して登場人物が少なく、閉鎖的な世界が描かれる原作。独特の静謐な雰囲気がアニメでも良く出ていて、他のアニメとは一味違う仕上がりになっています。アニメならではの良い演出もたくさんありますし、1話は最高です。

原作とアニメの客観的相違点

キャラクターデザイン

原作ネズミは短髪、アニメは長髪一つ結び。原作の紫苑にはなかった赤い瞳設定。

エピソードの順番入れ替え及びカット

原作では名前がある人物がアニメでは無名、またはカット多し。
例)治安局羅史、富良、月薬、恋香、サソリ、医者、シオン、カランとリコ

原作には名前付きで登場して、主人公たちのサイドで物語を繰り広げる。

矯正施設潜入からNO.6崩壊、ラストのストーリー

原作

治安局員にネズミが撃たれ、重傷に。紫苑が必死の介抱。市民の暴動が起こり、市は混乱状態に。満身創痍の二人は市庁舎にたどり着き、群衆を鎮める。その後、ネズミは旅に出、紫苑は都市の再建委員として邁進する。沙布をはじめとした沢山の人の想いを託され、都市を再建する使命を持った紫苑にとっては困難な戦いの始まりであることを予感させるラスト。終わりであって、同時に始まりであることが明示されている。

アニメ

紫苑が必死のネズミを助けた後、紫苑が撃たれ、死ぬ。ネズミまで後を追おうとする。その後、何かよく分からない力(エリウリアス)が働き、矯正施設崩壊。さらに死んだ幼馴染・沙布が現れ、その歌で紫苑が生き返る。ラストシーンで紫苑はNO.6の元重要人物から託された大切なデータを破壊してNO.6に向かって歩き出す。都市の再建に必要なデータを破壊した紫苑の行く末は全く予測できない。

原作では多すぎるくらいの紫苑の心情描写全面カット

これは仕方ないのかも。映像作品で言葉を使った心情描写には限界がある。そう考えるとあさのさんの作品は映像向きではないような…。

個人的に、あさの作品の魅力はストーリー全体というよりも場面の心情描写と斬新な視点。変わったタイプの主人公が多いのもネックになりうる。

テレパシー少女蘭の蘭やバッテリーの巧なんかも文章表現が伴ってこそ!みたいなところがある。小説で読むと「なるほどそう来たか…」という感じで納得できるものも、映像では限界がある。そのなかに素敵な言葉や視点がたくさん織り込まれているので勿体ない。

アニメ全体の感想

散々原作の良さを書いておいてなんですが、私はアニメきっかけで原作再読、読了しています。だからこれは純粋なアニメ単体の感想に近いと思います。

原作読む(小学生)→アニメ放送(中学)→アニメ視聴(大学生)→原作再読・読了の流れです。当時YA版は高いので図書館で読んでいたのですが、人気で巻がそろっていませんでした。中学生になると一切児童書を読まず一般作品を読んでいたことも、完結まで追えなかった一因でしょうか。アニメ化したときにCMは目にしたのですが深夜枠&忙しいという理由で当時はアニメ放送も見ていません。

ラストの展開を知らず、細かい設定も忘れてアニメを見ていても、ちょくちょく違和感を覚える部分がありました。それでも中盤くらいまでは工夫されて作られている感じがありました。「最後はどうなるのだろう⁉」の方が勝って、細かい部分は気になりませんでした。

そんな気持ちが吹っ飛んだのが11話です。何が起こったのかさっぱりわからず、伝わるのは駆け足感…。何より納得がいかなかったのは紫苑の死から蘇生です。ラストの締めで白黒はっきりつけないあさのさんだけど、こんなラストは絶対に書かないだろうと強く思いました。小学~高校生の間に同著者の他作品もいろいろ読んでいたので余計に。

テレパシー少女蘭シリーズ『闇からのささやき』のオマージュか?と思いました。いやアレは主人公が超能力持ちでシリーズの2巻、翠が主人公・蘭にとって誰よりも代えがたい親友、もしくはそれ以上の存在であることを示すエピソードでした。

ネットで当時の感想を調べてみると「原作と全く違う」「話が分からん」等々…。

全体としてシリアスが貫く作品で、原作では死なない人(しかも主人公)が死→蘇生という改変はいかがなものか。今まで描かれた犠牲が安っぽく見えるし、そこに文句をつけるのは原作至上主義の人でなくとも仕方ないと思います。

 

納得できない私は原作を読み、購入し、瞬く間に原作ファンになったのでした。原作も少し駆け足展開ですし、あさのさんも考えあぐねた上のラストという雰囲気があります。SF部分に期待して、合理性を求めている人にとっては微妙かもしれません。それでも私は整然と纏まって隙のない物語より、作者の葛藤が伝わってくる話が好きです。ラストの感じも好みです。特にこの作品は外伝『beyond』まで読むとまた違った景色が見えてきます。

そんなこんなでアニメ版と原作のNO.6について何回かに分けて書いていきたいと思います。原作を読んだ後だからこそ思うアニメの感想と原作の気になるポイント中心になる予定です。

お読みいただきありがとうございました!

追記:一応の後編記事↓ 

原作小説について↓

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