六等星の瞬き

ひっそりと本(児童書)について書きます。たまに雑記も。

ズッコケ三人組(40年以上親しまれる三人組!)①

ズッコケ三人組シリーズ/那須正幹作。絵は前川かずお高橋信也ポプラ社  

この作品は有名だと思います。戦後の娯楽系児童文学の先駆けで、年配の方にも知名度があるのでは?40周年を迎えたロングセラー。大型書店では店頭に並べられていることもあるので、まだ売れ続けているのでしょう。

 小学校編が50巻と『ズッコケ中年三人組』(熟年もあり)があります。

 前者の方はほぼ全巻読んでいて、ずっと好きな作品のひとつです。中年・熟年編は一般向けで、児童書ではありません。主人公補正がほとんどなく、現実感とシビアさが多分に含まれています。結構大人な話題も含まれます。小学校編とは毛色が異なって面白いのですが、少々人を選ぶかもしれません。この記事は主に小学校編についてです。

私は小学5年生くらいまでマンガ調の挿絵の児童書を敬遠していました。学級文庫を読みつくしたとき、たまたまズッコケが目に入り、失礼な話ですが「仕方ない、読んでみるか」という感覚で手に取ったのです。あまりの面白さに驚愕、本を借りあさりました。

それいけズッコケ三人組 (ポプラ社文庫―ズッコケ文庫)

それいけズッコケ三人組 (ポプラ社文庫―ズッコケ文庫)

 
ズッコケ中年三人組

ズッコケ中年三人組

 

  どんな話?

瀬戸内海に面したミドリ市花山町(モデルは広島県)が舞台。八谷良平(ハチベエ)、山中正太郎(ハカセ)、奥田三吉(モーちゃん)の3人の小学校6年生時代を描いた話。

これ!というジャンルに分けられないのがこのシリーズの魅力です。強いて言うなら冒険もの、でしょうか。日常生活や学校行事を描いた巻もありますが。冒険の種類は時に悪者に追われたり、財宝を探したりと多岐にわたっていて、なんとタイムスリップや宇宙人・地底人等との接触もあります!少年心をくすぐる話が満載‼

ポップな挿絵と裏腹に哀愁漂う巻があるのも魅力です。一読しただけで印象に残り続けるような展開・シーンも多いです。ホラーな部分は洒落にならない怖さがあります…。結構攻めた巻があるのに下品感がないのも面白いポイントですね。

日常感と非日常感がうまく融合していて、全巻通して独自のズッコケの世界が構築されています。日本のどこかに3人が実在しているかのような感覚があり、子供は夢中になると思います。一見男子向け作品ですが、女子も楽しめると思います。

3人の光る個性 

ズッコケの世界はユニークな書きだし文から始まります。その巻のテーマやこれから起こることに誘導しつつ、この3人の紹介をしっかりやってしまうのです。町の風景や季節の描写を読み終わり、本題に入っていくころには3人のプロフィールが読者の頭に入っています。だからどの巻から読んでも面白い私も初めて読んだ巻は27作目でした。

モーちゃんなら「どこもかしこも丸々と太った少年」、ハチベエなら「色の真っ黒いちび少年」、ハカセなら「らっきょうに眼鏡をかけさせたような」といった具合で形容されます。文字に起こすとなかなかひどい(笑)。でもこの3人は本当に憎めないし、良いトリオです。

モーちゃん:スローモーのモーがあだ名の由来。泰然と構えているようで、臆病かつ繊細なところがある。好人物で知られている。彼が怒るときは読者からみてもインパクトがある。誰にでも分け隔てなく優しいので女の子からの評価も高い。趣味は何よりも食べること。

ハチベエ:運動神経は抜群に良い。おっちょこちょいで喧嘩っ早く、トラブルメーカーの気あり。物語の推進力。あっけらかんとしている。彼の魅力は要約しにくいです。本編を読めば感じてもらえるかと…。私はハチベエが一番好きですね。

ハカセ:本が好きで少々理屈っぽい。愛読書はノンフィクションや学術書。トイレ内での読書が趣味(第一巻もトイレのシーンから始まっていたはず)。冷静さを担うキャラだが、人間味もちゃんとある。外見に反して秀才タイプではない。テストより実生活に使える知識がある。両者の性格の違い故、ハチベエと仲たがいしかけることもあるが、やっぱり仲間。

どこかずっこけている3人は小学校低学年からの腐れ縁。いつしか「ズッコケ三人組」と呼ばれるようになりました。一見、典型的なキャラ設定に見えますが、そんなことは決してなく、三者三様唯一無二の関係性があります。各巻で起こる事件を通して、それぞれの状況下で3人が躍動します。毎回違った一面を見せてくれる主役たちです。

この記事ではシリーズの最大の魅力であり、タイトル名の3人について書きました。まだまだ沢山の見所がありますし、個人的に好きな巻についても書いていきたいと思います。

お読みいただきありがとうございます。

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