六等星の瞬き

ひっそりと本(児童書)について書きます。たまに雑記も。

吹奏楽コンクールの中止&管楽器演奏について思うこと

2020年全日本吹奏楽コンクールが中止になりました*1

新型コロナウイルスの感染拡大防止で春の演奏会中止、部活の制限や休校措置で多少の影響が出ることを予想して、2月初旬に前記事を書きました。ただ、このときは中止の事態になるとまでは考えていませんでした。

大規模イベントや行事の中止には驚かなくなってきた昨今、コンクールができないかもしれないのは薄々感じていたけれど、いざ決定を聞くと残念な気持ちになりました。

※前記事 

この記事ではコンクール中止の件やコロナ禍の管楽器演奏、オーケストラなどを含む演奏会の再開について思うことを書いています。新型コロナウイルス関連は繊細な話題なので根拠を探すことを心がけましたが、まだ定まっていないことが多いと感じます。

吹奏楽コンクールの中止決定

「中止になって残念」といっても、私は当事者ではありません。本当に気持ちの整理がつかないのは現役の人たち*2でしょう。

学生の部活なので全員が「部活が好きでコンクールも好きで、楽器も好き!」という訳ではないと思います。一人ひとり思い入れや熱量に温度差があって当然。でも「夏にコンクールがあるもの」という認識は強固なもので、そこに焦点を当てて活動している団体も多いでしょう。それがなくなるのは多かれ少なかれ衝撃がありますね。

私自身は夏のコンクール時期の部の雰囲気に戦々恐々としていたタイプですが、「コンクールがなくなります」と言われたらきっと平静ではいられず、やっぱり喪失感があったと思います。

コンクールというのは、夏の一時だけのものではないと思います。例えば一年前から「来年こそはメンバーに入る」、「自分たちの代で上の大会に進みたい」、「来年もこの場所に立ちたい」とか、それぞれの何らかの想いを抱えていたんじゃないでしょうか。

現役の人たちの今の気持ちは完全には分からないけれど、蚊帳の外の大人が「この非常事態に当たり前だ」、「コンクールがすべてではない」。果ては「吹奏楽なんてブラック部活」の論調で部活・コンクール廃止を語るのは何か違うと感じてしまいます。今、この瞬間に当たり前にあったものが無くなるのが悲しいんですよ。

 

集大成として、この夏にできそうな活動といえば、少人数アンサンブルくらいしかないか…? そもそも授業の遅れを取り返すのに部活の時間自体なくなるのかもしれない。

管楽器奏者受難のとき

コンクールの中止以前にコンサートの類は2月からずっと中止と延期が相次いでいます。プロは言うまでもなく、アマチュアでも管楽器を吹く人にとっては厳しい状況。大人の一般団体だったら、練習場所である市民会館等が閉鎖されているようですね。

確かに吹奏楽やオーケストラは「三密」が発生しやすい状況が多いと感じます。

  • 管楽器は呼気、唾液、飛沫と無関係ではいられないイメージが強い。
  • 人数が多い。100人ほどが在籍しているのも珍しくはない。
  • 防音対策上、必然的に密閉空間で行う場合が多い。
  • 周りがうるさいので大きな声で会話する場面が多い。

いままでなら、野外で練習できていた(平時でも騒音と周囲への配慮は大前提)部分も、今後はかなり目が厳しくなりそう…。コロナで打撃を受ける要素が多すぎる。

 

後遺症*3が残る可能性があるといいます。肺機能は管楽器演奏に直結するのでプロの管楽器奏者に後遺症が出たら失業につながります。アマチュアでも、好きなのに諦めざるをえない悲しい事態になります。

コンクールの中止はやむを得ないのかもしれません。たとえ命が無事でも後遺症で肺に損傷を負ったなんて洒落にならないです。日常生活への打撃は勿論、プロを目指す子や趣味として楽器を続けたい子、1回やめても何かのタイミングでまた吹き始める子…など、楽器に関する可能性は狭まります。長期的な目で見ると、個人と楽器のより良い関係のためのリスク回避であると思います。

演奏会などを再開するには

国内外で演奏会を再開するための模索が始まっているようですね。

https://www.br.de/nachrichten/bayern/bamberger-symphoniker-wissenschaftler-messen-aerosolausstoss,Ry6T6OU

・霧を可視化して、管楽器演奏に伴うエアロゾルの飛散状況を観測。

・管楽器演奏に伴うエアロゾルの拡散はほとんど見られない。

7月開催予定のすみだトリフォニーホールにおける主催公演についてのお知らせ News | [公式]新日本フィルハーモニー交響楽団

・弦楽器は1.5メートル、管楽器は2メートルの間隔をあける。

金管楽器吹き出し口には不織布装着。

・管楽器の唾(水分)は使い捨ての紙や布へ。

・奏者はマスク、ゴーグル装着。

ヤマハ | 管楽器・教育楽器の飛沫可視化実験

・日本を代表する楽器メーカー、ヤマハの実験。詳細はリンク先。
 ※6月17日に追加。

 

上記の取り組みは演奏会の再開にあたって重要な試行錯誤の一つでしょう。ただ仕方ないことなのかもしれませんが、特に管楽器は制約が多いです。今後、演奏に伴うリスクが正しく周知されていけば、より最適な形式を模索できるのはないかと思います。

 

個人的な素人意見として金管楽器吹き出し口(ベル)からは、ほとんど空気の排出が感じられません。出てはいるけれど、曲がりくねった管の中で減衰されているのではないでしょうか。演奏そのものの感染リスクは、管楽器を演奏しない人が想像するよりは高くないと思います。

飛沫よりも、唾*4抜きの問題が重要だと思う。コンサートホールなどは舞台上に落としていい場所が多く、学校の部活だったら共用で雑巾を使いまわす学校もあります。

あと気になるのは、ふとした時に口周りを触るような行為。木管楽器だったらリードを湿らせたり、金管楽器なら高い音が続いたとき休符の合間で口を拭ったりするような無意識な行為にどのくらいのリスクがあるのでしょうか。いちいち手洗いや消毒をするわけにもいきません。第一、消毒液のついた手で楽器を触るのは気が引けます。エアロゾルの問題よりも演奏に伴う行為の方がネックな気がします。

そして練習に伴って絶対に会話をしなければいけませんよね。本番では椅子の間隔をあけられたとしても、練習では難しい。スペースの問題もあるし、意思の疎通が図りにくくなる(特にアマチュア)。

 

聴衆の熱気あふれるホールで「大編成、合唱付き、管楽器が鳴らす!」みたいなプログラムをできる日は来るのでしょうか。過去の熱気あふれるコンサート映像を見ると、ちょっと切なくなります。今後しばらく間隔をあけた配置になると、室内楽が限界なのかもしれないですね。

「生」の文化が滅びないでほしい

クラシックコンサートに限らず、演劇やライブ等のイベントも軒並み中止になっています。「配信」に新たな活路を見出す団体のニュースも目にしますが、その場しのぎにはなっても「代替」にはなれないと思います。というか、ならないでほしい…。

 

クラシックコンサートに限って言えば、既に名演と呼ばれる演奏がCDや動画サイトで聴けるようになっています。評価の定まったものが手軽に聴ける時代に、コンサートに足を運ぶ層は、生ならではの迫力と不確実さを求めていると思います。

音楽の特性は「たった一瞬のもので有形ではない」というところ。生み出された数秒後には消えてしまうのに、その場に居合わせた人の記憶には残る。配信であってもリアルタイムで不確実さを味わうことができるけど、やっぱり場に集って生の音を聴く満足感と静かな熱狂の心地よさには及ばないでしょう。

 

ただ「滅びないでほしい」とはいっても、現段階で感染拡大防止のためには「人と距離を取って接触を避けること」が一番有効だといわれています。従来通りの形式の演奏会がすぐにできるとは思えません。作り手は段階を踏んで試行錯誤し、観客は感染に気を付けつつ足を運んで、気長に応援するしかないのかなと思います。

2020年春~夏に中止になった演奏会のプログラムを再演してほしいですね。各団体が折角構成したプログラムですから、聴きたいなと感じます。今年はベートーベン生誕250年ということで、それにちなんだ演奏会も多かったですしね。

 

かなり散文的な記事ですが、お読みいただきありがとうございました。

*1:吹奏楽連盟www.ajba.or.jp

*2:出場者には学生だけでなく大人も含まれますが、この記事では学生の部活を想定しています。コンクールの一般部門に出場する方たちは、楽器や吹奏楽が大好きな人が多いので、きっと何とか再開する人が多いはず。

*3:恐ろしい新型コロナの後遺症「私たち世代のポリオ」「重篤化すると全身に血栓塞栓症広がる」(木村正人) - 個人 - Yahoo!ニュース

*4:唾といっても、実際は温かい呼気の中に含まれた水分が冷たい管の中で結露した水分の方が多い。

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