六等星の瞬き

ひっそりと本(児童書)について書きます。たまに雑記も。

怪盗クイーン(怪盗は不滅!そこに赤い夢がある限り…!)

はやみねかおる作、K2商会絵。青い鳥文庫刊。性別不詳、年齢不詳の怪盗クイーンが世界を股にかけ、「怪盗の美学」を満足させる獲物を狙う!

夜の闇に浪漫を感じ、赤い夢の中で生きている子供がいるかぎり、怪盗がいなくなることはない(『怪盗クイーン公式ファンブック』冒頭より)

 作品全体を貫くテーマのようなものであり、「赤い夢」は、はやみね先生の作品ではお馴染みのフレーズ。怪盗は赤い夢の住人、名探偵も同じ括りです。この響きに無性に惹かれてしまう方は読んでみてください。あっという間にワクワクできると思いますよ。

青い鳥文庫|怪盗クイーン|青い鳥文庫|講談社BOOK倶楽部

年齢・性別不詳で体格も良いクイーン。しかも怪盗。青い鳥文庫は少年少女の主人公が多いですから、かなり異彩を放ってます。

怪盗クイーンはサーカスがお好き (講談社青い鳥文庫)

↑1巻。初期の異世界感と浪漫を感じさせるイラスト。

たくさんの登場人物!そのなかでもメインは?

クイーンジョーカー人工知能RDの二人と一台(?)でしょう。普段は超弩級巨大飛行船《トルバドゥール》に乗って旅をしています。完全に俗世間から切り離された空間にいるわけですが、怪盗の美学を満たす獲物のためには地上に降り、大胆不敵な犯行を華麗に成し遂げます。

怪盗クイーン 公式ファンブック 一週間でわかる怪盗の美学 (青い鳥おもしろランド)

上は公式ファンブックの表紙です。本当にイラストが美麗ですね。ちなみに中身もかなり凝っていて、過去のイラストをまとめているコーナーもあったので、ファンの方は買って損がないと思います。

クイーンとジョーカー、左上の手がRDのマニピュレーターです。人工知能ですから実体がなかったのですが、『怪盗クイーンと悪魔の錬金術師』ではイメージ上で擬人化したイラストが登場しています。

クイーン:年齢性別のみならず、パーソナルデータが一切不明。人間離れした美貌。素手でものを切断、毒耐性がある上に変装の達人。
仕事をさせれば一流の大怪盗だが、日常ではお気楽モード全開。ジョーカーくんは友人

ジョーカー:黒い中国服に身を包む格闘技の達人。幼少期に村が襲撃され、謎の収容施設で格闘技の訓練を受けていた。施設から脱走、クイーンに救われ、名前・衣食住・仕事を与えられた。そのような過去ゆえ、葛藤する場面もある。
性格は素直で真面目。いかつい外見とは裏腹に優しい。自由奔放なクイーンに振り回されつつも、尊敬の念が垣間見える。クイーンは仕事上のパートナー

RD:飛行船のすべてを制御する世界一の人工知能。もとは日本の倉木博士の研究所で開発された。クイーンシリーズのオープニング短編はRDをクイーンが盗み出す話である(『いつも心に好奇心!』)。
クイーンのイタズラでたびたびハッキングされる。だが、クイーンの犯行にRD は欠かせない。毎巻、地味に大活躍しているのがRD。クイーンの犯行はRDなしに成し得ないのでは? 歌って踊れる人工知能を目指している。

このシリーズは個性豊かなキャラがわんさと登場するので、とても紹介しきれません。クイーンたちと対峙する探偵卿(もはや仲間みたいな感じですが)やホテルベルリン第二次世界大戦中にナチス勢力に対抗するため組織された武装集団)、クイーンを狙う暗殺者集団等々…。なかなかロックな児童書です。顔ぶれ的に戦いや殺し合い描写は出てきますが、滅多に死者は出ません。

あとはクイーンの師匠・皇帝(アンプルールや皇帝の料理当番・ヤウズが良く出てきますね。皇帝は140センチそこそこのイカした爺ちゃんですが、ロボット工学に精通しており、トルバドゥールの設計も行ったというギャップがあります。

レギュラー化している人たち以外に、その巻限りの登場人物も魅力的です。基本的には勢いがあって、コメディ要素も多い。でも、それぞれの人物がえもいわれぬ哀しみを纏っていることが多くて、「よく考えたらこの設定、なかなかシリアス」と気づいて少しドキッとさせられます。そのエピソードはフィクションではなくて、今日も世界のどこかで現実に起きている事柄であると思います。はやみね先生の大人視点のメッセージが暗に込められている気がします。

このシリーズの魅力はキャラクター以外にもたくさんあるので追々書いていきたいと思います。それにクイーンを語るには『名探偵夢水清志郎シリーズも欠かせません!

夢水が先に同レーベルで看板作品になり、クイーンシリーズは夢水清志郎スピンオフ短編から生まれたものです。「いつも心に好奇心!」では、貴重な故・村田四郎先生(夢水のイラスト担当)のクイーンとジョーカーが拝めます。それが20年近く続く人気シリーズになっているとは凄いですね。現在まで既刊12巻*1が発売されています。

 

 

*1:2020年5月現在

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村