六等星の瞬き

ひっそりと本(児童書)について書きます。たまに雑記も。

映画『若おかみは小学生!』感想② 原作ファン視点でも最高!

映画としての映像や音楽、場面についてまとめています。映画の筋に関するネタバレはしていないつもりです。前回の感想記事では原作寄りの観点から書きましたが、今回もその続き(?)です。

作画

巷では「すごい」といわれていますし、スタッフも定評のある方たちばかりです。確かに綺麗でした。でも絵ばかりが「凄いでしょ」という感じで主張してこなかった印象です。たまにありますよね?作画だけはやたらと綺麗だけれど、精彩を欠く作品。その点、若おかみでは作画1点にのみに特化するのではなく、総合的な作品として完成していました。進んでいく物語とともに自然に流れていくような感覚でした。細部についても、映像技術分野に長けている人なら尚更色んな発見があるのだろうと感じます。

背景・舞台設定

第一印象としては「春の屋立派!秋好旅館立派!花の湯温泉賑わいがあるなあ」でした。花の湯温泉は有馬温泉でロケハンしたとか。確かに山がちで坂が多いところ、細い道の雰囲気は似ています。春の屋は京都の老舗旅館だとか…!私が原作から勝手に想起していたのは、花の湯はもっと人が少ない温泉街で、土地の起伏もあまりないイメージでした。映画では緑豊かな山間の風景が美しかったです。確かに坂がある方が映像としての奥行や起伏が生まれますよね。

音楽

沢山のパターンのメロディーがあるわけではなく、基本の旋律が場面ごとに展開されていたように思います。それがまた素敵な音楽で、サントラを聞きたい気分です。発売予定はないのかな…。鈴木慶一さんが担当されているようですが、原作と同じ講談社の児童書『NO.6』のアニメと同じ方なんですね。いろいろ思うところもあるアニメNO.6でしたが、音楽はすごく良くて劇伴だけを単体で聴くこともあります。

印象に残った場面

あかねさんの物憂げな美少年ぶり

原作でも繊細な美少年ですが、動きがつくと更にけだるげな感じが出ていました。思わず動きに見とれてしまいました。家族写真がタブレットだったのは時代ですね~。

厨房でのおっこ・康さん・ウリ坊・美陽ちゃん・鈴鬼

尺の都合上、おっことユーレイたちの絆、鈴鬼くんのイタズラ小鬼っぷりが伝わりにくいのを補完するかのような、良いオリジナルシーンでした。おっことユーレイのスリーショットに和みました。何気ないシーンに手がかかっているのは凄く良いですね。

真月さんの書斎

荘厳な雰囲気があって、素敵な空間。美陽ちゃんの肖像画が飾ってあることで、秋野家の家族を出さずとも、亡き愛娘への想いが伝わる演出でした。

グローリーさんとおっこ

このコンビが熱かったですね。原作ではグローリーさんが登場するとき、おっこと、ボーイフレンドであるウリケン(ウリ坊の弟の孫)の関係が進展します。原作のおっこにはウリケンがお似合いです。グローリーさんは2人の誘導役というポジションなので、おっことグローリーさんの関係に目を向けたことはなかったなあ…。

見ていて、『黒魔女さんが通る‼』(同じ青い鳥文庫で、若おかみとのコラボ作あり)のメイン師弟も劇場でみたい!と思いました。「黒魔女さんのハロウィーン」を上映したら「熱い」どころではなくなりそうですが(笑)。一回アニメ化してしまっている(しかも2012年)ので、今後の劇場版なんて夢のまた夢ですけどね。『若おかみは小学生!』は青い鳥文庫の中でも王道なので映像化しやすかったんだと思います。

鑑賞後の思わぬ効能

清々しい気持ちで接客の仕事ができた!映画を観て、仕事を始めた時の初心を思い出したのでしょうか。もともと小学校時代に『若おかみは小学生!』を読んで、着物でテキパキ働くことに憧れをもっていたんです。アルバイトは完全にその影響で選びました…。旅館ではないけど共通するような部分もあります。その思い入れも相まって、再度仕事について考えさせられました。全く予想もしていなかった効能でした!人それぞれ、鑑賞後の感想の差異はあれど何か心に残るものがあるのではないでしょうか。

タイトルに抵抗が」、「児童労働」(衝撃の視点です)などの声があるようですが、2003年開始の健全な青い鳥文庫シリーズですから安心してください。確かに小学生が旅館の若女将というのは今考えると驚きの設定ですが、「児童労働」なんて言葉、頭にかすりもしなかったですよ!原作おっこは宿題をしたり、友達とおしゃべりしたり、デートしたり…労働以外にも色々しています。単なる児童労働ものだったら小学生に受けないと思いますよ…。

青い鳥文庫は小学生・中学生対象の児童文庫レーベルです。当時の青い鳥文庫読者から見ても、本作は健全で王道のイメージでした。ちょっとひねた子は読まなかった人もいるんじゃないかな…?

方向性のよく分からない記事になりましたが、結論はこうです。原作派でも楽しめた映画版。機会があれば『若おかみは小学生!』をぜひ! 

 

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